とりあえず就業規則を作ったら、判断できなくなった話
── 制度が「触れないもの」になるとき ──
※判断が止まる構造|制度凍結で止まる
はじめに
この記事は、就業規則の作り方や不利益変更の要件を解説するものではありません。
また、「就業規則を入れるのは間違いだ」という話でもありません。
人を雇い、体制が整い、
専門家に依頼して就業規則を用意する。
その判断自体は、自然で妥当なものです。
それでも、
入れたあとに、かえって判断が止まることがある。
その構造を整理するための話です。
まず結論
就業規則で判断が止まるのは、次の3つが重なったときです。
- 実態とのズレ
- 変更への過度な警戒
- 誰が決めるのかが曖昧
制度そのものより、
扱い方の問題です。
導入までは、むしろ順調です
よくある流れはこうです。
- 従業員が増える
- 法的にも整備が必要になる
- 専門家に依頼する
- ひな形をベースに整えてもらう
出来上がった規則は、網羅的で完成度も高い。
どこから見ても「正しい」ものです。
ここまでは、問題はありません。
運用が始まってから、空気が変わる
ところが、実際に回し始めると、
- 実態に合っていない条文
- 現場では使われていないルール
- 管理部からの確認
が少しずつ出てきます。
そして、見直しを検討したときに出てくる言葉があります。
「それ、不利益変更になりますよ。」
この一言で、空気が止まります。
「危ないもの」になる瞬間
この言葉が出た瞬間、
- どこがズレているのか
- 何を直したいのか
- どこまで修正が必要なのか
といった整理より先に、
「触ると危ないもの」
として扱われ始めます。
理屈上は変更できないわけではありません。
手続きを踏めば進められます。
ただ、
- 工数が読めない
- 誰が主導するか曖昧
- 失敗したときの責任が重い
その結果、
見直したほうがよいと分かっていながら、
何も決められない状態が続きます。
「削れない」のではなく「決められない」
ここで起きているのは、
法的に一切変更できない、という話ではありません。
何を決める話なのかが整理されていない
という状態です。
- 何を固定したかったのか
- 何は将来見直す前提だったのか
- 実態とズレた場合、誰が判断するのか
ここが共有されていないまま制度だけが整うと、
条文は守る対象になります。
やがて、
守るものから、
触れないものに変わります。
決める立場が消えていく
さらに厄介なのは、
誰も「決める側」に立てなくなることです。
- 作ったのは専門家
- 運用するのは管理部
- 最終判断は経営側
しかし設計の前提は、十分に共有されていない。
結果として、
専門的で難しそうな領域として扱われ、
経営判断から少しずつ遠ざかります。
制度が増えたのに、
判断は軽くなっていない。
むしろ重くなっています。
これは労務の問題だけではありません
就業規則は一例です。
- 規程
- 契約書
- 各種社内制度
どれも同じ構造を持ちます。
制度を入れることで
判断を終わらせたつもりが、
実際には、
判断を先送りする構造を作っていることがある。
いま、どこで止まっていますか
- 実態とのズレでしょうか
- 不利益変更という言葉への警戒でしょうか
- 誰が決めるのかが曖昧なことでしょうか
論点を切り分けない限り、
制度は助けになりません。
最後に
就業規則は、組織を守るためのものです。
しかし、
「入れたから安心」
「専門家が作ったから大丈夫」
という状態のままでは、
判断は軽くなりません。
制度を増やすことと、
判断できる状態になることは、同じではありません。
(次に読む記事)
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